西洋音楽における音律

西洋音楽における音律について説明する。音程は漢数字で表記されてきたが、ここではアラビア数字を用いる。

ピタゴラス律は、完全5度のみで構成される。この音律では旋律が美しく聞こえる。

純正律は主要3和音の和音または余韻が美しく聞こえるように各音を定めた音律である。この音律では主要3和音が正しく響く。

中全音律(ミーントーン)は、長3度が美しく聞こえるように完全5度を定めた音律である。この音律は旋律と多くの和音が比較的美しく聞こえ、鍵盤楽器などにも適用できる。

平均律は1オクターブ、つまり周波数比1:2の音程を12等分した音程の取り方である。この音律は旋律が美しく、すべての和音が無難に聞こえる。鍵盤楽器などに向いており、調に合わせた調律が必要ない。

なお、基本的な半音について、ピタゴラス音律の半音は狭く、純正律は広く、中全音律はさらに若干広く、平均律は平均的である。ここで、旋律だけを重視する場合、半音の広さに違和感を覚える人もいる。半音が広い音律の場合は、旋律上重要な意味が含まれる箇所においては半音を狭くするなどといったテクニックも可能かもしれない。

西洋音楽では曲中で複数の音律が用いられることがある。ここでは、純正律、中全音律について説明する。

純正律

まず、和音が美しい純正律について説明する。

純正律では、和音の周波数比ができるだけ単純になるように音程を定めることによって、和音のうなりがなくなり調和する。純正律における音程は特殊なものを除いて全て、主音に長3度や完全4度を足したり引いたりすることで得られる。ある音に音程を足すことと引くことは、その音の周波数にその音程の周波数比をかけることと割ることに相当する。長3度は5/4の周波数比、完全4度は4/3の周波数比である。Cを基準とした場合のC-durとC-mollの純正律の平均律に対する各音の音程の違いは次の表の通りである。

平均律からの差[セント]主音との周波数比主音からのたどりかた
C011度
Cis-29.3325/24+(純正完全4度)+(純正長3度)+(純正長3度)
Des+11.7316/15+(純正完全4度)-(純正長3度)
D+3.919/8-(純正完全4度)-(純正完全4度)
Es+15.646/5-(純正完全4度)-(純正長3度)
E-13.695/4+(純正長3度)
F-1.96
(G H D Fの属7)-31.17
4/3
21/16
+(純正完全4度)
なし
Fis-9.7845/32-(純正完全4度)-(純正完全4度)+(純正長3度)
Ges+9.7864/45+(純正完全4度)+(純正完全4度)-(純正長3度)
G+1.963/2-(純正完全4度)
Gis-27.3725/16+(純正長3度)+(純正長3度)
As+13.698/5-(純正長3度)
A-15.645/3+(純正完全4度)+(純正長3度)
B+17.609/5-(純正完全4度)-(純正完全4度)-(純正長3度)
H-11.7315/8-(純正完全4度)+(純正長3度)

なお、「+(純正完全4度)」は「-(純正完全5度)」としても良く、「-(純正完全4度)」は「+(純正完全5度)」としても良い。オクターブは適宜足し引きするものとする。

純正律はその調の主要3和音および一部の和音についてのみ有効であるため、それ以外では、読み替えが望ましい。ここでは、転調ではなく一時的な読み替えについて、また知恵について述べる。属7のFはかなり低く、旋律的に良くない場合があるため、そのようなときは調和を犠牲にしてFを純正律の高さ、もしくはG-DurとみなしD+(短3度)、つまりD-(完全4度)-(長3度)として高くとるとよい。増4度はDやHと調和し、減5度はDesと調和する。場合によってはこれを7/5もしくは10/7の周波数比へと単純にし、平均律から-17.49セントもしくは+17.49セントのずれがある音にして主音と調和させても良いだろう。純正律できれいに調和しない主要な和音には長調におけるⅡの和音のD F Aがあり、これはDをF-(短3度)、つまりA+(完全4度)として低くとることで解決するのが通例である。もう1つの主要な和音は、短調でよく出現するC F Bおよび類似の和音であり、これはBをF+(完全4度)として下げて取ることで解決するとよい。

純正律による調和はすばらしいが、欠点も存在する。純正律は前述のように特定の和音について有効であるため、それ以外の和音ではおかしくなる。つまり転調どころか和声進行に応じて純正律の調を読み替えなければならない。調を読み替えればこれ自体は解決するが、ピッチの問題が発生する。読み替え時には読み替え前からのばしているか新たな同一音の音の高さを変えずに読み替えたいが、純正律には主音以外に平均律からのずれが等しい音がないため、これを行うと必ず主音が平均律での音程とずれて推移する。従ってこのような読み替えを繰り返すと主音がずれる、つまりピッチがずれてくることがある。一時的であれば許容できるもののピッチがずれたまま演奏するのは良くない。従って、純正律を妥協して不調和な箇所を作るか、のばしている音の高さをばれないように次第に変化させるか、音の変わり目でいきなりのばしている音の高さを変えることが必要になる。普通の考え方であれば不協和な場所を作るであろう。しかし、実際にはのばしている音の高さの変更もできるだけ使った方が良い。聞いていておかしく感じないやり方と程度がいくらでもある。例えば、のばしている音をあたかも自然に小さくするとか、自然に入り直すとか、盛り上がりでごまかして微妙に高くしていくとか、盛り下がりでごまかして微妙に低くしていくとかである。

純正律では、主要3和音以外では読み替えが必要になり同一音の高さが変更されるため、その際に違和感及び落ち着きのなさを与える。また、鍵盤楽器等、音の高さが固定された楽器には適さない。また、純正律は全音が2通りあり、旋律性に反する。

中全音律(ミーントーン)

純正律よりも適用可能な和音を広げたのが中全音律(ミーントーン)である。Cを基準とした場合の中全音律の平均律と純正律に対する各音の音程の違いは次の表の通りである。

平均律からの差[セント]純正律からの差[セント]主音との周波数比主音からのたどりかた
C0011度
Cis-23.95+5.381.04491+(ミーントーン完全5度)×7
Des+17.11+5.381.06998-(ミーントーン完全5度)×5
D-6.84-10.751.11803+(ミーントーン完全5度)×2
Es+10.27-5.381.19628-(ミーントーン完全5度)×3
E-13.6905/4+(ミーントーン完全5度)×4
F+3.42+5.381.33748-(ミーントーン完全5度)
Fis-20.53-10.751.39754+(ミーントーン完全5度)×6
Ges+20.53+10.751.43108-(ミーントーン完全5度)×6
G-3.42-5.381.49535+(ミーントーン完全5度)
Gis-27.37025/16+(ミーントーン完全5度)×8
As+13.6908/5-(ミーントーン完全5度)×4
A-10.27+5.381.67185+(ミーントーン完全5度)×3
B+6.84-10.751.78885-(ミーントーン完全5度)×2
H-17.11-5.381.86919+(ミーントーン完全5度)×5

ここで、ミーントーン完全5度とは5の4乗根、つまり1.49535の周波数比を持つ。ちょうど(完全8度)+(完全8度)+(純正長3度)の4分の1の音程である。その結果、平均律よりも3.42セント狭い音程となる。オクターブは適宜足し引きするものとする。

中全音とは純正律上の大全音(9/8の比)と小全音(10/9の比)の間の全音ということであり、ミーントーン完全5度2つ分である。基本的にはこの全音しか出現しない。従って旋律が美しく聞こえる。中全音律では長3度が調和し、短3度、完全4度、完全5度は少し唸って聞こえる。この唸りが独特であり、ずれと調和の両方をもたらす。長3和音、短3和音は特有の美しい響きとなる。その他の基本的な和音は比較的美しく、もしくは無難に聞こえる。また、同じ音名の音の高さの変動がなく、落ち着いて聞こえる。そのため鍵盤楽器にも適する。理論的には、音の種類を増やすことによりあらゆる和音や転調に耐えられるが、鍵盤等の楽器の都合やピッチが変動したような印象を与える問題が限界となる。一方で、ある音を平均律で言う異名同音となる音名の音で代用すると実用にならない和音が発生するため、これを最小化する必要がある。

この後、音の種類を増やさずに適用可能な和音・調を増やしたヴェルクマイスター法、キルンベルガー法が考案され、あらゆる調や無調音楽にも12種の音で適用可能な平均律が出現するのである。

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